イカがスッテに触れたその瞬間、まだ手元には何も伝わっていない。しかし、穂先だけはすでにその変化を捉えている。ウキウキトップとは、「手元に伝わる前の情報」を目で釣るために生まれたロッドだ。
「止めた、その先にこそ本質がある。」——シマノ公式がそう謳うウキウキトップは、2021年の登場から2025年の25リミテッドまで全5機種に展開された。
この記事の結論を先に書いておく。
- コスパで選ぶなら → セフィアXR B66UK-GS(約3.4万円)
- 楽しさ最強を選ぶなら → セフィアエクスチューン B511UK-GS(約4.7万円)
- 最高峰を選ぶなら → セフィアリミテッド UK-B62-GS(約10万円)
この3行で判断できる人はそれでいい。「なぜこの結論になるのか」を知りたい人は読み進めてほしい。
ウキウキトップとは何か|グラスソリッドが生んだ新ジャンル

ウキウキトップはシマノの開発チームとテスターのイカ先生こと富所潤氏が中心となって生み出したロッドだ。
「釣果最優先から離れ、こんなロッドがあったら面白いんじゃないかという発想から生まれた提案型のロッドだった。賛否を巻き起こし、質問攻めにあったのを覚えている。」
そう振り返るほど、当時は異端扱いだったロッドが今や5機種に展開されるシリーズになった。
なぜウキウキトップは「目感度が高い」のか
一般的なイカメタルロッドでのアタリの伝わり方はこうだ。
イカがスッテを触る → ラインにテンション変化 → 竿全体に伝わる → 手元で感じる
ウキウキトップは情報伝達の順番が違う。
イカがスッテを触る → グラスソリッドの穂先が先に反応 → 人間の目が先に察知する
「ウキウキトップが捉えるのは、手元にはまだ届かないイカの繊細な触り。それを視覚的にアングラーに告える。」(シマノ公式)
つまりウキウキトップは手元に伝わる前の情報を穂先の動きで「見る」ロッドだ。イカがスッテに触れた瞬間、穂先が「フワッ」「ピクッ」「スッ」と数ミリ動く。その変化を目で捉えて掛けにいく——これが目感度の正体だ。
ヘラ釣りを海でやっている感覚

へら釣りでは浮きが1目盛り沈んだだけで合わせる。ウキウキトップもまったく同じ原理だ。浮きの代わりに穂先が浮きになる。だから「へら釣りを海でやっている」という表現は決して大げさではない。
ウキウキトップの最大の特徴はグラスソリッドの穂先だ。シマノのイカメタルロッドはセフィアBBからリミテッドまで基本的に全機種カーボンソリッドを採用しているが(タフテックα、タフテック♾️【インフィニティー】、ハイレスポンスソリッドなど)、ウキウキトップだけが唯一グラスソリッドを使っている。グラスソリッドはカーボンソリッドと比べて格段に柔らかく、かつ折れにくい。この極軟穂先がラインの負荷を受けると、まるでへら浮きのように大きく垂れ下がる。そのわずかな動きがアタリだ。
穂先カラーの変遷

穂先カラーもへら浮きをイメージした設計で、夜の海上での視認性にこだわっている。初代エクスチューン(21年)はトップから2番ガイド間が黄色のみだったが、XR(22年)でオレンジ・黄緑のツートンカラーに変更され「完全にへら浮き」と評されるほど特徴的なデザインになった。25リミテッドではさらに濃いめのグリーンと明るいオレンジに刷新され、視認性がさらに向上している。
品番の読み方
| 記号 | 意味 |
|---|---|
| B | ベイトロッド |
| S | スピニングロッド |
| 66 | 6フィート6インチ(全長) |
| UK | ウキウキ(頭文字) |
| GS | グラスソリッド |
ウキウキトップ 全5機種一覧と発売の歴史
| 発売年 | グレード | 型番 | 全長 | 自重 | 継数 | 実売価格目安 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2021年 | セフィアエクスチューン | B66UK-GS | 6’6″(1.98m) | 87g | 3(変則) | 約4.7万円 |
| 2021年(後期追加) | セフィアエクスチューン | B511UK-GS | 5’11″(1.80m) | 87g | 3(変則) | 約4.7万円 |
| 2022年 | セフィアXR | B66UK-GS | 6’6″(1.98m) | 87g | 2(センターカット) | 約3.4万円 |
| 2022年 | セフィアXR | S68UK-GS | 6’8″(2.03m) | 83g | 2(センターカット) | 約3.4万円 |
| 2025年 | セフィアリミテッド | UK-B62-GS | 6’2″(1.88m) | 89g | 3(変則) | 約10万円 |
機種別おすすめ度
| 機種 | 特徴 | コスパ | 楽しさ | 目感度 |
|---|---|---|---|---|
| エクスチューン B66 | 万能・オールラウンド | ★★★★ | ★★★★ | ★★★★ |
| エクスチューン B511 | 楽しさ最強ショートモデル | ★★★★ | ★★★★★ | ★★★★ |
| XR B66 | コスパ最強・2ピース | ★★★★★ | ★★★★ | ★★★★ |
| XR S68 | 唯一のスピニング・キャスト対応 | ★★★★★ | ★★★ | ★★★★ |
| 25リミテッド | 目感度・止まり感が別次元 | ★★★ | ★★★★★ | ★★★★★ |
ウキウキトップの歴史は2021年、エクスチューンB66UK-GSの登場から始まる。翌年にショートモデルのB511UK-GSが追加され、同年にセフィアXRへも展開。そして2025年、満を持してセフィアリミテッドメタルスッテに最上位機種として登場した。
21セフィアエクスチューン B66UK-GS|ウキウキトップの原点
発売:2021年 / 実売:約4.7万円
ウキウキトップという概念の出発点がこの1本だ。6フィート6インチというスタンダードな全長で、どんな状況にも対応しやすいオールラウンドモデルとして登場した。
穂先は変則3ピース(バットジョイント+ソリッド脱着式)で、穂先だけの交換が可能。万が一の破損時も穂先のみの交換で済み、修理コストが大幅に下がる。
デメリットは全長66というレングス。船が揺れる夜はこの長さが有利だが、穂先が遠い分だけ臨場感がB511より薄れる。
21セフィアエクスチューン B511UK-GS|「楽しさ最強」のショートモデル
発売:2021年後期 / 実売:約4.7万円
「楽しさという面で言ったら、僕はこれが最強のロッドだと思いました。リミテッドよりも楽しさはこっち。」
開発した富所潤氏本人がそう言い切るほど、このショートウキウキは独特のポジションを持つ。5フィート11インチまで短くすることで穂先が自分の目線に近くなり、まるでへら浮きが目の前で動くような圧倒的な臨場感が生まれる。
また、ショート化によって操作性が格段に向上している。長い66では「誘い・落とし・止め」の動作がやや大振りになるが、511は穂先が軽くレスポンスが良い。
穂先の脱着式はB66と共通で、修理コストの安さというメリットも同じだ。
欠点は波気がある日だ。短い分だけ揺れを吸収しにくく、穂先が安定しにくい状況がある。荒れた夜は66の方が有利だ。
22セフィアXR B66UK-GS・S68UK-GS|2ピースで持ち運べるウキウキ
発売:2022年 / 実売:約3.4万円
XRのウキウキトップ最大の特徴はセンターカット2ピースだ。エクスチューンの変則3ピース(バットジョイント方式)と違い、真ん中で折れる構造なので収納性が高く、電車や飛行機での遠征に向いている。
「2ピースのエクスチューンと呼んでいいんじゃないか」と富所潤氏が言うほどスペックの作り込みは高く、ハイパーX・スパイラルXコアを採用。カーボンモノコックグリップ、フロントトリガーのXシートも搭載している。
XRにはもう1機種、唯一のスピニングモデルS68UK-GSが存在する。6フィート8インチとシリーズ最長で、船上でのキャスト対応や広範囲を横方向に探る釣りを想定したモデルだ。
エクスチューンとの主な違いは2点。センターカット2ピースであること、そして穂先が一体成形(脱着不可)であること。穂先交換ができないため、万が一の破損時はブランクス1本ごとの修理になる点は注意が必要だ。
B66UK-GS(ベイト)vs S68UK-GS(スピニング)どちらを選ぶか
- イカメタルの基本スタイル(真下に落とす釣り)→ B66UK-GS
- キャストして広範囲を探りたい・横方向の釣りを混ぜたい → S68UK-GS
25セフィアリミテッド UK-B62-GS|M46Xが変えた「止まり」の感覚

発売:2025年5月 / 実売:約10万円
「エクスチューンのウキウキを持っている人が持ち替えたとしても、すごく喜んでくれる竿になると思う。全然違う。」
富所潤氏がそう断言する理由は素材の進化にある。25リミテッドは東レが開発した高弾性カーボン繊維「トレカM46X」を採用し、ブランクス強度が従来比20%アップ。この強度向上が穂先設計に革命をもたらした。
強度が上がったことで、穂先下のブランクスにより強い張りを持たせることができるようになった。従来のウキウキトップは誘った後に全体がふにゃりと曲がりがちだったが、25リミテッドでは「穂先はふにゃーんとなるが、ここがピタッと止まって待ってくれる。かける時にキュっとかかる」という新しいフィーリングが生まれた。
「乗ったのではなく、狙い通りに『掛けた』。」(シマノ公式)
全長は6フィート2インチ。66(長くてダルい)と511(短くて波気に弱い)の弱点をどちらも持たない中間の長さだ。「リミテッド1本でウキウキトップをという時に、ど真ん中の長さにした」と富所潤氏は語る。
強度面でも「大剣600gダブルでも抜き上げて折れなかった。実測1.2kgまで抜き上げた」という富所潤氏のテスト結果がある。グラスソリッドだから折れやすいという先入観は無用だ。
俺が現在メインで使用しているのがこの25セフィアリミテッドUK-B62-GSだ。実際に丹後エリアで複数回使用した実感として、「止まり」の質が別物だという富所潤氏の言葉は嘘じゃない。止めた瞬間の穂先の収束・収まり方が明らかに違う。早い。実際の釣行でこんな場面があった。止めた瞬間、穂先が「スッ」と1mmだけ戻った。違和感だけで合わせると良型ケンサキ。手元には何も伝わっていなかった。ウキウキトップを初めて「買って良かった」と思った瞬間だった。
シーズン中は品薄になることも多いので、気になる人は早めのチェックをおすすめする。
詳しいインプレッションは[セフィアリミテッドUK-B62-GSレビュー記事]にまとめているので合わせて読んでほしい。
ウキウキトップの正しい使い方|カタログスペックは無視でいい
ウキウキトップは通常のロッドと使い方が異なる部分があるので、ここで整理しておく。
構え方
竿は水平から気持ち上向きで構える。下向けると穂先が自分から遠ざかり、アワセがワンテンポ遅れる。「気持ち竿を絞るように」というイメージが正しい。
スッテの重さ
カタログに「3号から25号」と書いてあっても気にしなくていい。20号・25号・35号、全部ポロっとぶら下げてOKだ。重めのスッテを使った方が穂先が大きく曲がり込み、ウキウキトップ本来の目感度が際立つ。
アタリの取り方
大きな変化だけに合わせようとすると取れないアタリが多い。「穂先がふわっと持ち上がる」「ちょっとブルっとした感じ」——そういう微細な違和感が前アタリだ。「違和感を覚えた次の瞬間、アングラーの身体は自然と反応する」という状態になれば、ウキウキトップの使い方が体に染み込んでいる証拠だ。
抜き上げ強度
グラスソリッドだから折れやすいというのは誤解だ。実測で1.2kgまで抜き上げたテスト結果がある。大剣ダブルでも問題ない。ただし不意の大物がかかった時は無理な角度で力を入れず、素直にタモを使うほうが無難だ。
ウキウキトップが向いている人・向いていない人
向いている人
- 穂先でアタリを見て掛ける釣りが好き
- 前アタリの駆け引きを楽しみたい
- イカメタル中級者以上で「次のステップ」を探している
向いていない人
- 常に誘い続けるアクティブな釣りスタイルが好き
- 手感度重視で穂先より手元の感覚を優先したい
- 水深100m超の深場で常に50号以上を使うエリアがメイン
ウキウキトップは「止め」の釣りと相性が抜群だ。逆に言えば、誘い続けることで釣る釣りスタイルには他のロッドの方が合う場合もある。
予算・目的別 どれを選ぶか
3万円台で買いたい → セフィアXR B66UK-GS
ウキウキトップの基本性能をこの価格で手に入れられる。2ピースで持ち運びも便利。まずウキウキトップを試してみたい人の入門機として最適だ。
5万円台で一本しっかり揃えたい → セフィアエクスチューン B511UK-GS
「楽しさ最強」のショートウキウキ。丹後・敦賀など水深が比較的浅いポイントが多いエリアでは特に真価を発揮する。穂先脱着式で修理コストが安いのもメリット。
予算度外視で最上位を → セフィアリミテッド UK-B62-GS
M46Xが生み出した「止まり」の感覚は別物だ。穂先のメリハリが違い、前アタリの拾い方が変わる。ただし正直に言うと、5万円のエクスチューンの2倍釣れるわけではない。

リミテッドのコストの一部は、釣果とは直接関係しない「所有満足度」に使われている。高級車と同じ塗料を使ったというピッカピカの外観、ワインレッドのブランクス、精巧なグリップ周りの仕上げ——「部屋でこの竿を見ながら一杯飲めるような竿を作りたかった」という開発コンセプトがそのまま形になったロッドだ。釣りから帰って竿を眺めて満足する、その体験も含めての10万円だと思っている。

まとめ
シマノはこのロッドを「釣果最優先」ではなく「楽しさ」から開発した。しかし結果として、目感度という新しい武器を手に入れ、今では釣果を追求するアングラーにも広く支持される存在になった。
止める。見る。掛ける。
ウキウキトップはイカメタルの面白さそのものを変えた一本なのかもしれない。
いつも素晴らしいフィールドに連れて行ってくれる丹後の各船宿と、同船者の皆さんに感謝しながら、今シーズンも穂先を見つめていきたい。

